映画やドラマやYou Tubeを早送りで見て楽しい?「映画を早送りで観る人たち~ファスト映画・ネタバレ――コンテンツ消費の現在形~ 」

読書感想文

◎目次

序章 大いなる違和感

第1章 早送りする人たち ――鑑賞から消費へ

第2章 セリフで全部説明してほしい人たち ――みんなに優しいオープンワールド

第3章 失敗したくない人たち ――個性の呪縛と「タイパ」至上主義

第4章 好きなものを貶されたくない人たち ――「快適主義」という怪物

第5章 無関心なお客様たち ――技術進化の行き着いた先

 

Z世代

〇〇世代と呼ばれる、生まれた年代毎のグループがあるのはご存知かと思います。

日本人というのは分類が好きな人種なので、世相を反映した行動的特徴を元に自らをカテゴライズしている訳ですが、

その最新トレンドであるZ世代

明確な定義はありませんが、現在の年齢でいうと10代前半から20代半ばぐらいまでが「Z世代」に該当します。

そんなZ世代の特徴

  1. 基本的にはネットリテラシーが高い。
  2. 効率的で生産的な環境を好む
  3. 文字よりも画像や動画を好む。
  4. コミュニケーションは複数のSNSを利用してコミュニティを形成する。

といった特徴があるようです。

 

これらの特徴に則った消費行動というものを分析することで今後の社会というものが見えてくるものもあるのではないか。

あるいは、私もおっさんになっているので
これから接点が生まれてくるであろう新しい世代に対しての理解のヒントが得られるものがあるのかもしれないと思いこの本を読み始めました。

 

この作品には、現代の20代が映画などの映像コンテンツを「2倍速」で見るのは、どういった心理が働いているのかというのが詳しく言語化されています。

個人的にはたった900円で久々に満足できる文庫本でした。いわゆるコスパがいいというやつです。

 


◎内容としましては、アマゾン上にはこのように紹介されていました。

現代社会のパンドラの箱を開ける! なぜ映画や映像を早送り再生しながら観る人がいるのか――。 なんのために? それで作品を味わったといえるのか? 著者の大きな違和感と疑問から始まった取材は、 やがてそうせざるを得ない切実さがこの社会を覆っているという事実に突き当たる。 一体何がそうした視聴スタイルを生んだのか? いま映像や出版コンテンツはどのように受容されているのか? あまりに巨大すぎる消費社会の実態をあぶり出す意欲作。

Amazon.co.jp: 映画を早送りで観る人たち~ファスト映画・ネタバレ――コンテンツ消費の現在形~ (光文社新書) eBook : 稲田 豊史: 本

さらに、900円も出せない人や300ページの文庫本も読めないほどの人のために結論を言ってしまうと

若年層が早送り派となるのはひとえに「必要に迫られたコスパ重視の結果」であり、

  1. 若年層の所得減少
  2. 無料コンテンツの供給過多
  3. SNSによる、交友関係の過度な親密化と個性の重視化

などの要因であるということを著者は分析していました。

 


本書を読んだ感想としては

わたしは所謂ゆとり世代ですが、一時期はアートビジネスなどの研究をしていたので、現代コンテンツの消費というのは興味がある分野でありました。

ですので、ぼんやりと昨今に想像していたものが明確に言語化されており読了したときには満足感を得られる作品でした。

排他的な文章を書きなぐるだけですがクリエイター(笑)の端くれとして自己紹介をするときの私が持っていた、作者と享受者の関係性への違和感や、

実際にYou Tubeの動画は2倍速で見ることが多いので、消費者の一員として自然に行っていた消費行動を理由つけされていて非常に腑に落ちる内容であると同時にZ世代の苦悩というのが明確化してくるようでした。

私が何者にもなれないと自覚した時は残念ながら最近の出来事でしたが、それは途轍もなく虚しく、現状に向き合うのには時間がかかることを経験しています。

Z世代と呼ばれる世代は生まれた時からパソコンが身近にあって、スマートフォンの普及によってインターネットが生活の一部となっており、ユーチューバーや若いインフルエンサーといった

「隣りにいる同世代の、ものすごく社会に影響力を与える人」の存在により、自分自身を過小評価セざる負えないような環境や、

同じように何者かになるには個性が必要ですが、それを目指すして歩んでいくにはSNSという出る杭が打たれる同調圧力の世界で綱渡りをしながら進んでいかなくてはならない恐怖。

そしてそれらは、最初から打ちひしがれているのか、

それとも、そういった状況に慣れてしまっているのか分かりませんが
Z世代という存在に畏怖と敬意を感じました。

恥ずかしながら、自分はそこまで若い世代の考え方とズレは無いと思っていたつもりでしたが、全く覆される、ある意味、衝撃作でした

 


何れにせよ、個人的に2022年で一読の価値がある一冊となりました。

純粋に社会学に興味を持っている人だけでなくても、思春期なお子さんとうまく行っていない方など、

若い世代と接する機会がある人のヒントになるかもしれませんので、ぜひ読んでみてください

 

お題「我が家の本棚」