サイバーパンクにおける最古にして最先端の古典作品「ニューロマンサー/ウィリアム・ギブスン」

読書感想文

サイバーパンクにおける最古にして最先端の古典作品」

◎あらすじ

サイバネティクス技術と超巨大電脳ネットワークが地球を覆いつくし、財閥(ザイバツ)と呼ばれる巨大企業、そして「ヤクザ」が経済を牛耳る近未来。かつては、「マトリックス」と呼ばれる電脳空間(サイバースペース)に意識ごと没入(ジャック・イン)して企業情報を盗み出すコンピューター・カウボーイであり、伝説のハッカー「ディクシー・フラットライン」の弟子であったケイスは、依頼主との契約違反の制裁として、脳神経を焼かれてジャック・イン能力を失い、電脳都市千葉市(チバ・シティ)でドラッグ浸りのチンピラ暮らしを送っていた。

ニューロマンサー - Wikiwand

 


◎紹介

ハイテクと汚濁の都、千葉シティの空の下、コンピュータ・ネットワークの織りなす電脳空間を飛翔できた頃に思いを馳せ、ケイスは空虚な日々を送っていた。今のケイスはコンピュータ・カウボーイ能力を奪われた飢えた狼。だがその能力再生を代償に、ヤバい仕事の話が舞いこんできた。依頼を受けたケイスは、電脳未来の暗黒面へと引きこまれていくが……新鋭が華麗かつ電撃的文体を駆使して放つ衝撃のサイバーパンクSF!

ニューロマンサー (ハヤカワ文庫SF) | ウィリアム・ギブスン, 黒丸 尚  | Amazon 

 


◎感想

最近になってようやく、サイバーパンク2077のマルチエンディングを9割方見ることができた。

元来、サイバーパンクというカテゴリーは好きで、SFも好きだ。

幼少期にテレビで再放送していた映画A.I.に感動したところから始まり

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少し前はブレードランナーの最新作もみたし

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あなたの人生の物語」を映画化した「メッセージ」で名を知られたヒューゴー賞ネビュラ賞を受賞したテッド・チャンの息吹も読んだ

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しかし、ニワカだ。

それは単純に読書量が少ないから。

でも、SFは好きだ。

 

まぁそんなことは置いといて、

1984年に発表されて、サイバーパンクというカテゴリーを生み出したとも言える作品である「ニューロマンサー」を読んだ。

なかなかに大変だったがサイバーパンク2077をプレイしていたので当作で登場するキャラクターの役割はゲームに登場するキャラクターと置き換えることができて、意外にもイメージがし易かった。

登場する舞台名は「夜の街」《ナイトシティ》と呼び方は一緒である部分や、
役割ごとに登場人物をゲーム内の人物と置き換えると

  • フラットライン=ジョニー・シルヴァーハンド
  • ケイス=V(ノーマッド
  • モリィ=ジュディ・アルヴァレス
  • 冬寂(ウィンターミュート)=オルト・カニンガム

こんなかんじか?

 

それにしても、単純に文章が読みにくくて苦労した。

Amazonの紹介で電撃的文体という表現が使われているのも首が取れるほど頷ける。

なんというか、脚本的というか、接続詞が無いのでソレになれるまで苦労した。

例えば

 「武器を買いたい」

 女はナイフ類でいっぱいのケースを身振りで示した。

 「いや、ナイフは好きじゃない」

 女はカウンターの下から横長の箱を出してきた。黄色いボール紙の蓋には、首の膨れたコブラのとぐろを巻いた粗末な絵が捺してある。箱の中には、薄紙包みの同じような筒が八本あった。

こういう文章の場合は、

まず、ナイフを断ったケイスに対して女の行動描写な訳だが、「すると、」という接続詞が省かれていること。

次に、カウンターの横長の黄色いボール紙の蓋の箱を出してきて、すぐに箱の中身の描写に移っており、女が箱の蓋を開けたという動作の描写が省かれている。

おそらく、箱の蓋の描写を詳細にすることで
箱の形→箱の蓋→中身という視点移動を表している、もしくはそういう効果になっているのだと感じた。

 

最初はあまりにも専門用語が多く古い作品だから翻訳が変なのか、もしくは原著の内容が難しいのかと思ったが

芸術家のダイク・ブレアはギブスンの「簡潔で説明的なフレーズはエンジニアリングではなく、テクノロジーを取り巻くムードを捉えている」とコメントしている

https://www.wikiwand.com/ja/ウィリアム・ギブスン

作者のwikiではこんな内容があるように、翻訳が悪いとかではなく、原著も良く言えば詩的またはPOV的な表現に、

悪く言えば一見乱文のようにかかれているから仕方がないらしい。

しかし、それも素敵だ。

翻訳していただきまして感謝します。

 

逆に、この文体だからこそ、スピード感を感じるわけで、

まるでアクション映画を見ている時の高揚感がテキスト情報であるにも関わらず脳を駆け抜けていく。

まるでケイスに没入《ジャックイン》しているかのような疾走感を、乱暴なテキスト情報が私の脳で処理される前にニューロを掻き乱し駆け抜けていくのだ。

本を読んでいて、この快感は味わったことがなかった。

 

そう、快感なのだ。

ピンクの八角錠のブラジル製デックスをキメて、ナイト・シティの闇とネオンとの間を駆けていくような、

あなたもこの作品を読了する頃には癖になっているはず。

 

お題「我が家の本棚」